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イスミさんとミュゲ先生に聞く、ラマダーン月

イスラム教徒(ムスリム)の人々にとって聖なる月であるラマダーン月が、6月18日から始まる予定です(おおよそ1ケ月続きます)。大相撲の大砂嵐で話題になったように、この間、多くのイスラム教徒が断食をします。もちろん皆が断食をするわけではありませんが、イスラム圏のラマダーン月は、親戚や友人の家を訪問しあい、日没後には御馳走を囲み、夜を徹して楽しむ特別な期間です。本学にも多くのムスリム(男子)、ムスリマ(女子)の学生が学んでいます。そのお一人、イスミ・プラドニア・サフィアさんにお話を伺いました。また、社会人類学がご専門で、自身もムスリマである本学のミュゲ・イガラシ先生に、研究者の立場から日本で暮らすイスラム教徒について伺いました。今回のTUFS Today は、1昨年「私たちが作った、冊子『イスラーム教徒の生活~本当は楽しいラマダーン月~』」につづき、2回目のラマダーン月特集です。

2015.6.5 公開

→ 「私たちが作った、冊子『イスラーム教徒の生活~本当は楽しいラマダーン月~』」(2013年7月1日掲載)はこちらから

ismi イスミ・プラドニア・サフィアさん

断食月は、だ~い好き!

ご出身はインドネシアと伺いました。どうして日本に留学されたのですか?

はい、インドネシア大学社会学部の出身です。アメリカにも留学しましたが、日本のことを学びたくて日本政府の国費留学生に応募しました。今年の4月から東京外国語大学で研究留学生として日本語を学んでいます。

イスラムの教えを守った暮らしをされていると伺いました。日本で苦労することはありますか?

私は1日、5回の礼拝をしています。朝・晩はもちろんのこと、昼の礼拝は、寮の部屋に戻って行っています。春の今の時期は、昼の礼拝時間が、大学の昼休みにあたっているので、難しくはありません。ただ、冬になると、ちょっと時間の調整が難しくなるかもしれません。ほんの5分から10分のことですので、図書館の1室など、ちょっと使わせてもらえると助かると思っています。

食べ物の点ではいかがですか?

食べ物については、人により考え方が違います。とても厳格に考える人もいるし、緩やかに考える人もいます。私は緩やかな方。日本にはイスラム教徒が少なくて、厳格に行うのは難しいから、それでいいと思います。私は豚肉さえ入っていなければ、大丈夫です。

それでも、いろんなところに豚肉が使われていますよね?

そうなのです。スーパーでお菓子を買うときなど、原料の表示を見てもよくわからないことがあり、困ります。(豚が)入っているか、入っていないか、はっきり分かるようになっているといいと思います。Just Halal というアプリもあって、売っている食品の写真をスマホで送ると判定してくれるサービスなのですが、日本のお菓子はあまり載っていなくて残念です。厳格な人は、外では食事をせず、自分でつくっていますね。私は、みんなと外食もよくします。どこのレストランにも豚肉のはいっていない料理はたいていあるので、そんなに苦労はしません。

そうですか。食品表示だけでは、なかなかわかりませんよね。

日本にきて知り合ったイスラム教徒の友人のなかには、食品表示はみないし、何が入っているか聞かない、という人もいます。知らないで食べてしまうことは(宗教上)許されるので、知らないのが一番!ということです。へえ、そういうやり方もあるんだと、思いました。

もうすぐ、ラマダーン月ですね。断食はなさいますか?

はい、もちろん!私は8才位のころから、この時期になると親にならって、断食をしています。

わあ、たいへんですね。

え?そんなことありませんよ。私は、ラマダーン月はだ~い好きです。

えっ、そうなのですか?それはまた、なぜ?

だって、断食は倹約になって、お金がたまります。夜はみんなで楽しめるし。

そうなんですか!たいへんなんだろうな、とばかり思っていました。

そんなことはありません。イフタール(日没後、断食を終えてすぐにとる食事)のあと、みんなで、お話をしたり、お祈りをしたり、楽しいことがいっぱいです。

ラマダーン月には、特別な礼拝があるのですよね?

はい、タラーウィーフの礼拝といって、夜の礼拝のあとに行う礼拝です。これはみんなと一緒に行うといいとされているので、できれば、寮のなかにタラーウィーフの礼拝ができる場所があるといいなと思います。

他に、希望がありますか?

あとは、夜明け前の食事(サフール)ができるよう、朝早くに台所を使わせてもらいたいというのが希望です。

そうですか、それは実現するといいですね。ところで、日本の多くの人は、イスラムのことをよく知らないのですが、なにか聞かれることはありますか?

そうですね、スカーフをしているので、関心ももって聞かれることがあります。これ(スカーフ)は、どこで売っているの、とか。そんなにいやな目にあったことはありません。アメリカにいた時の方が、いろいろありました。でも、日本でも、怖い人のようにみられて電車の中で避けられたりすると悲しくなります。

う~ん、そうですか。いろいろな誤解や無理解がなくなるよう、私たち東京外大も、もっと努力しないといけませんね

はい、是非!東京外大にきて、日本人だけでなく、いろいろな国からの留学生と知り合えて、とてもよかったです。同じイスラム教徒でもいろいろな考え方、とらえ方があることも知りました。

これからもどうぞ頑張って下さい。今日はどうもありがとうございました。

muge ミュゲ・イガラシ先生

イスラム教徒は皆同じと思わないことが大事

異文化間、とくに日本人とイスラム教徒の間の結婚を、調査されたと伺いました。どんなことがわかりましたか?

いろいろなことがわかりましたが(笑い)、一言でいうと、世界の例にもれず、時間とともに社会に適応していくプロセスが見いだせます。

イスラム教徒は、一般的に、日本で暮らしにくいのでしょうか?

そんなことはありません。多くのことは、適応可能です。例えば、礼拝。1日5回も礼拝することは、私の出身地であるトルコでも、普通に働いていれば簡単ではありません。日本でも同じです。礼拝をしたくてもできない人は、夜の礼拝のときに、まとめて行うこともできるのです。(宗教的にも)それでよいとされています。

食べ物はいかがですか?

より問題になるのは、食べ物の方ですね。多くのイスラム教徒が戒律をやぶることに罪悪感を感じます。ただ、それも、時間とともに薄らぐことは、調査結果から明らかです。豚を食べない、というのを、私は次のように説明しています。あなたも、どんなにおいしいよ、と言われても猫の肉は食べたくないでしょう。イスラム圏からきた多くのイスラム教徒にとって、豚はそんな感じなのです。でも、その感覚は、適応により薄らいでいくことが多いのが実態です。もちろん違う人もいますが。

猫の肉・・・。そうですね、それは遠慮したいですね。日本人のイスラム観について、お考えを聞かせてください。

もちろんイスラム教やその文化についての知識は必要ですが、イスラム教徒だから、こういうはずだと思わないことが大事です。多くの調査が、宗教より出身文化圏の方が、影響力が大きいことを明らかにしています。たとえば南アジア出身のイスラム教徒とヒンドゥー教徒の方が、同じイスラム教徒であるパキスタン人とトルコ人より似ているのです。イスラム教徒はみな同じと思うのは誤解のもとです。

そうですね。ところで、この度、大学の生協でハラール・メニューが始まる予定です。どう思われますか?

いいことだと思います。日本に来て間もないムスリム留学生たちにとって、心配が減るでしょう。ただ、むしろ、ベジタリアン・メニューの方が汎用性が高いようにも思います。

ちなみに、先生は、ハラール・メニューを召し上がりますか?

そうですね。ぜひ試してみましょう。ただ….、私は、日本人の食べるものは、何でも食べますけどね(笑い)。

そうですか。でもどうぞ試食してくださいね。今日はどうもありがとうございました。


大学生協では、6月下旬より、ハラール・メニューの開始を予定しています。一般の料理とは違う鍋やフライパンを使うというルールによる、豚肉を使わない料理です。どうぞ、お楽しみに!