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私たちが作った、冊子「イスラーム教徒の生活~本当は楽しいラマダーン月~」

2013年7月1日掲載、7月7日追記

TUFS Todayではキャンパスのなかで行われている、さまざまな学生の活動をとりあげていきます。今回は、「イスラーム教徒の生活──本当は楽しいラマダーン月」という素敵な冊子の作成にあたった皆さんに話をききました。ラマダーン月とは、イスラーム教徒の人々が日中、「断食」を行う1か月です。今年は、7月9日にはじまります。さて、どんな楽しいことが待っているのでしょう?

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冊子を作ったのは八木久美子先生の宗教学ゼミでともに学ぶ仲間たち。誤解されがちなイスラーム文化を紹介しようと、授業を離れてこの冊子を作成しました。読んでもらいたい「読者」は、高校の後輩たち。冊子の制作にあたっての意図や特色、そしてさまざまなエピソードを聞きました。イスラーム文化について、あまり知られていない楽しい側面を知ることができます。また、記事の後半では、この冊子を実際に手に取って下さった大妻多摩中学高等学校と宇部フロンティア大学付属香川高等学校の高校生の声をご紹介します。

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────冊子「イスラーム教徒の生活」を作るにあたっての経緯や、その意図について聞かせてください。

私たちはゼミで宗教について勉強しています。その成果を何か形に、と思いました。なぜ冊子「イスラーム教徒の生活」かと言うと、高校の世界史の教科書にはイスラームの情報がほとんど載っていないからなんです。日本の高校生はイスラームのことをほとんど知りませんし、「コワい」というイメージをもってしまっています。これは正しい認識とは言えないので、その偏ったイメージを少しでも変えたいと思って作りました。高校生と年齢が近い私たちだったら、分かりやすく、ソフトに伝えることもできると思いました。

────イスラームのなかでも特になにについて取り上げたのですか?

まずは、イスラーム文化を代表する儀礼である「断食」を取り上げることにしました。イスラーム暦のラマダーン月に行われる断食のことを、24時間1カ月ものあいだ何も食べない、と思っている人もいますが、じつは日が暮れたら食べていいんです。そうしたイスラームの常識を、教義やコーランなどからではなく、お祭りや文化など、もっと日常生活に溢れている身近なものから、伝えたいと思いました。日本でお祭りを楽しむような、そういうノリがラマダーン月にもあるんです。日が沈んだあとに家族が集まって、普段よりも豪華な食事を楽しんだりもします。

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────断食が行われる月は、毎年違うんですか?

はい、違います。イスラーム教徒は生きているあいだに2回同じ時期のラマダーン月を迎えると言われています。今年は、7月9日から8月7日までの間です。

────エジプトやトルコやパキスタンなど国によっても異なっている部分があるんでしょうか?

お祈りをするとか、昼間に食事をしないとか、そういう基本的なことは同じですが、夜になってどのようなものを食べるのか、というのは、日本のおせちが各地方で微妙に異なっているように違っています。

イスラーム教徒と言ってもアフリカから南アジアまで、かなり広域に渡っているので一括りにはできないところがあります。

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────冊子を作るのは大変だったと思うのですが、どのように調べていったのですか?

さまざまな文献をもとに調べました。けれども、調べることよりも大変だったのは、写真集めでした。旅行や留学のときに撮った写真を使ったのですが、どうしても足りないところはイラストで頑張りました。

────この冊子は、どこで配布したのですか?

制作に携わったみんなの、出身高校に送りました。もともと高校生に伝える、というのが目標でしたから。

────制作にあたってどういったところが難しかったですか?

いまの高校生がどこまでイスラームや断食について知っているのかが分からなかったので、内容をどのレベルに設定していいのかがなかなかつかめず難しかったです。

────この冊子のなかで強調したい点はありますか?

一般的に「宗教」はコワい、というイメージがあるかもしれませんが、そうとは限らないよ、ということに気がついてほしいです。断食はじめ、イスラーム教が私たちとなんの関係もないのかといえば決してそうではなくて、じつは似ているところもたくさんあるというのを分かってほしかったんです。

私たちは、イスラームの宗教を学ぶことによって、信仰している人たちは特別な存在ではないんだ、ということが分かりました。知識がついていけば、そういう誤解はどんどん無くしていけるんじゃないかと思います。

私たちも入学前はやはり偏見がありましたし、断食のこともつらそうだなと思っていた程度でした。でもこの冊子にも書いたとおり、断食が行われるラマダーン月は本当に楽しいんです。

DSCF5710  断食明けの食事を共にする女性たち(イスタンブル)

たとえばパキスタンではラマダーン月が終わると「イード」というお祭り行われるのですが、これは日本のお正月のようなものなんです。普段なかなか会えない人と会ったり、食べないものを食べたり、お年玉みたいなものをもらえたり……。彼らはとにかく楽しんでいます。これには最初、本当に驚きました。

────もちろんラマダーン月のあいだもみなさん働いているんですよね?

地域や職種にもよりますが、労働時間を短縮することはあるようです。特に学校はお昼前に終わることが多いみたいです。お昼を過ぎると、公園が昼寝をしている人で溢れるらしいですよ(笑)。他にもいろいろ配慮がなされているようですから、むしろ大変なのは外国で働いているムスリムたちです。周りの人は普段通りごはんを食べているし、会社も普段通りありますからね。

────ラマダーン月に旅行や留学していて困ったことはありましたか?

ラマダーン月のあいだは、夜はレストランが全部予約で埋まってしまうんです。前日までに予約をしないと入れないことを知らず、ごはんを食べられなかったことがあり困りました。けれども、この期間にやったことは善行とみなされるので、裕福な人たちのなかには通りにテーブルを用意して、人々に食事を振るまったりもするんです。あのときはそれを食べてなんとか飢えをしのぎました(笑)。

────それにしても夜に集中して食べてしまうと、太りそうですね。

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日中は寝ていることが多いので、太ってしまいほんとに困ります(笑)。でも、街はデコレーションされているし、特別な料理も食べられます。みんなやたらと盛り上がっているし、テレビもお正月番組みたいに特番を組んでいます。ですから、日中食事ができないことや太ってしまうことももちろん悩ましいのですが、それよりなによりまず楽しいんです。

以前、断食はつらいでしょう? と現地の人に聞いたら、つらいけど食事のありがたみが分かる、と言っていました。楽しいだけじゃなく、そういったことにも気がつけるのがいいところだと思います。

子どもたちは、お昼までとか時間を決めて断食して、徐々に慣らしていくみたいです。あとは、病気の人や妊婦は、断食しなくてもいいんです。

────なるほど、例外もあるんですね。

そうなんです。例外もありますし、断食のしかたも個々人でけっこうばらばらです。現地に行って思ったのですが、ゆるい人がほんとに多かったです(笑)。トルコでは、お酒をがぶがぶ飲んでましたし、礼拝をしない人もいました。スカーフをしないでミニスカートを履いている女の子も多かったですね。トルコが一番ゆるいのかもしれませんが、スーパーや雑貨屋ではお酒が買えるし、断食をやらない人も多いです。ただお祭りはしっかりと盛り上がっていましたけどね(笑)。

────どのように盛り上がっているのですか?

公園とか広場に仮設テントが建てられていて、コンサートを開催したり、芸人がコントをしたり、伝統芸能を披露したりもしていましたよ。モスクはイルミネーションで装飾されてとてもきれいでした。通りや家もクリスマスのようにデコレーションされていて、まさに日本の七夕飾りのようでした。

そういえば、ラマダーン・セールなどなど、ラマダーン月にかこつけた商戦もめちゃくちゃ盛んでした(笑)。

misr  カイロの町のイルミネーション

────そんなに盛り上がっているのですか! 実際に現地に行ったりしないとなかなか分からないことですよね。

たしかにそうなんです。学んだり、経験するまでは、やっぱり宗教への偏見も少なからずあったと思います。勉強しはじめてからは、宗教はじつはもっと生活に馴染んだもので、価値観のようなものなんだと知りました。日本で言うと「お年寄りを大事にしよう」というようなものです。

異文化を知ることによって、日本を客観的に見ることができるようになったことも大きかったです。むしろ日本のほうが変わっていることが多いかも、といろいろ気がつきました。

────この冊子の反響は?

母校に送ったら、大人気で高校の先生にとってもほめてもらいました! 先生たちからはコピーでもいいから欲しいと言われて、とても嬉しかったです。

イスラームについての勉強を高校でやることは、ほとんどありませんので、この冊子が少しでもそのきっかけになっていると本当に嬉しいです。


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高校生、そして高校の先生から一言

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さて、この冊子を手にとってくれた高校生は、どんなことを思ったでしょうか?大妻多摩中学高等学校の野村 真人先生と宇部フロンティア大学付属香川高等学校の清水明宏先生にご協力いただき、高校生の声を聞きました。

大妻多摩中学高等学校の皆さんから

Aさん、

イスラーム教と聞くと、中東での紛争やテロがまず思い浮かびます。また男尊女卑やお酒・豚を口にしてはいけないなどの規制も思い浮かびます。この冊子を読むと、必ずしも上に述べたような攻撃的で堅苦しい宗教でないことが分かりました。ほとんどの人がテロに反対していると知り、少し安心しました。…女性が被るベールでオシャレを楽しむこともできると知り、将来イスラーム圏に行ったらステキなベールを付けたいと思いました。東京モスクを訪問した体験やこの冊子のおかげで、私の中の「イスラーム教」のイメージが大きく変わり、興味も出てきました。

Bさん、

日本人は無宗教だと言われ、私もそう実感していたのが、外国からすると宗教的であり、イスラーム教とも少し似ているところがあるのだということにも驚きました。

Cさん、

イスラームと自分との距離が近く感じることができた。

Dさん、

(ラマダーンの時)ランタンを飾り付けたり、限定のパンを発売したり、日没時間に合わせるために授業を早く終わらせるところもあって、うらやましい! この冊子はキャラクターの会話で進んでいくのでとても読みやすい!この冊子を読んで、トルコへ擬似的に旅行したような感じがしました。

Eさん、

イスラーム教に対して抱いていたイメージの数々は、固定概念だったと、この冊子を見て気付きました。

Fさん、

ラマダーン中、何も食べれなくて辛いものだと思っていたけど、夜にごちそうが食べれたり、テレビでは特別番組がやっていたり、意外と楽しそうなこともあるんだなぁとびっくりしました。ラマザン・ピデを食べに行きたくなりました。

Gさん、

イスマーイールがキラキラしてて面白かったです。

などなど。そして、この冊子を、世界史の授業で配布下さった野村先生からは、次のようなコメントをいただきました。

大妻多摩中学高等学校ではイスラーム世界に関しては、高校2年でイスラーム世界の形成と拡大、高校2年の終わりから高校3年の初めにかけてイスラーム世界の危機と改革な どを学習します。しかし、大学受験を意識するため、どうしても足早になり、王朝の変遷、人物・事件・運動の解説が中心になってしまいます。そんな中、この 冊子を頂き、拝見すると、イスラーム教徒の人々の生活が生き生きと描かれ、あらためて世界史学習において地域に住む人々の生活・風俗・文化を語ることが重 要なんだと気付かされました。また、生徒たちは、前述の学習内容の他に東京ジャーミー見学体験、「アラブの春」など新聞やテレビで報道さているイスラーム 世界の時事に通じており、多少同世界に関する素養があることが、この研究冊子を存分に楽しむことが出来た理由だと思います。本校でも今年から世界の多様な 文化を吸収するという観点から、トルコ・セミナーが実施されます。今回の取り組みが貴大学と本校の高大連携の一歩となれば幸いです。

 

宇部フロンティア大学付属香川高等学校の皆さんから

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Sさん、

学校の授業では何となくしか理解できなかったことを、このパンフレットを読んで詳しく知ることがきまました。自分と関わりのない宗教には、勝手な先入観や偏見を抱いてしまいがちですが、今日、このパンフレットを読んで自分の知らなかったイスラーム教の世界を知ることができてよかったと思います。また、パンフレットには絵や写真がたくさんあって、わかりやすかったです。

Tさん、

日本人はほとんど無宗教だと思っていたし、私自身が無宗教だとおもっていましたが、これを読んで、私たち日本人がとても宗教的だということがわかりました。ラダマーン月も、「断食」という言葉のイメージが強く、「絶対、痩せるやん!」と思っていましたが、実際は逆のようで、とても興味深かったです。

Aさん、

一番はじめに宗教観、次からイスラームについての紹介と、ページの構成についてよく考えられていると思った。また国ごとの生活や食べ物の違いなど、同じイスラームの人々でもいろいろ違うことがあって驚いた。日本人の気にするところをよくまとめられていると思う。

Fさん、

日本人だから普通のことだと思っていたが、お盆にお墓参りにいったり、お正月に神社にいくことは、宗教であるということがわかった。他の国の人がしていることを自分たちはびっくりするけれど、他の国の人はば日本人の行動にびっくりするのかもしれない。イスラーム教について今まで思っていたことが違うこともわかった。これを読んで勉強になった。

Nさん、

イスラーム教と聞くと、テロなど危ないイメージがあったが、これまで深く考えたことがなかった。今回これを読んで、いろいろ知ることができてよかった。断食についても、きつそうなイメージしかなかったが、よく考えてみると詳しくは知らなかった。仕事や学校の時間までかわったり、夜はごちそうを食べるということを知って驚いた。もっと知りたいなと思った。

Uさん、

とてもカラフルで楽しいパンフレットでした。読んでいくうちに、ますますイスラーム教についての興味がわいてきました。同じラマダーン月でも、国によってその過ごし方も様々なんだということが良くわかりました。登場人物を設定して会話するような形でまとめてあったのが、とても魅力的で絵本を読んでいるような感じで、難しいと思っていた宗教の詳しい部分なども抵抗なく、すんなり理解できました。

この他にも、多くの皆さんからコメントをいただきました。最後に、世界史の授業で冊子を使ってくださった清水先生からのコメントです。

 山口県にある宇部フロンティア大学付属香川高等学校では、1年次に世界史Aを学び、2・3年次に文系の生徒が世界史Bを学んでいます。
 2001年9月のアメリカ同時多発テロ事件以降、イスラーム教徒に対するイメージが急速に悪化しました。高校生にイスラーム教徒のイメージを聞いても、ネガティブなものが少なくありません。しかし、それは我々のイスラム教徒に関する知識と理解の不足が原因です。そういった意味では、今回、東京外国語大学の学生さんたちが「イスラーム教徒の生活」のパンフレットを発表されたことは、大変有意義なことだと思います。各国のイスラーム教徒の生活やイスラーム圏のCMなど、高校生が興味をもちやすいテーマを、かわいいイラストつきで紹介するなど、熱意と工夫が見られます。これにより、生徒達はイスラーム教徒に対する正しいイメージをもち、相互理解ができると確信します。

ご協力、どうもありがとうございました。

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冊子作成にかかわった皆さん(☆は座談会参加者)

大場あやさん(ウルドゥー語専攻4年)☆、尾崎仁美さん(アラビア語専攻4年)☆、小澤菜穂さん(アラビア語専攻4年)、小島明さん(アラビア語専攻4年)☆、白鳥夏美さん(トルコ語専攻4年)☆、土田桃子さん(ウルドゥー語専攻4年)、平野貴大さん(ペルシア語専攻4年)、藤原咲季さん(ウルドゥー語専攻4年)、向笠由希絵さん(アラビア語専攻4年)☆、渡辺亜実さん(アラビア語専攻4年)☆

パンフレットは、こちらからダウンロードいただけます → ファイル(6.5MB)